電動自転車で箱根路に挑戦!とまでは言いません。まずは実現可能性があるか? フィージビリティ・スタディーをしてみたいと思います。(はい、初めから逃げ腰です。)
超一流の登山家や冒険家の方だって、いきなりエベレストに挑戦するわけではなく、入念な事前調査/トレーニングを積んで、最終目標に挑戦するわけで、根性も体力も人並み以下で、体重だけは人には負けないKanatecとしては、YAMAHAの電動自転車がどこまで頑張ってくれるか、人車一体の耐久レースになると思います。
■人車一体の登坂能力
これまでの電動自転車体験より、走行距離が多少が長くなっても傾斜が緩い方が圧倒的に楽。
鉄道の登坂性能と比較してみると;
- 日本の鉄道の基本 25‰(貨物)〜35‰ :全く余裕(例:鈴廣かまぼこの里から箱根湯本駅まで、国道1号線経由で約20‰)
- 箱根登山鉄道 最大傾斜 80‰ :アシストレベル強、時速10km程度で数10分程度なら巡航可能(例:二宮神社から小峯御鐘ノ台大堀切まで、競輪場前経由で約65‰)
- Kanatec登坂限界 120‰ :アフターバーナ点火で数分程度登坂可能、これ以上の登坂時間は酸欠の恐れ(例:険道74号線 久野坂下からの激坂127‰)
- 箱根ケーブルカー 174‰ :自転車を押しても登坂不可能
こんな感じなので、「平均斜度40‰、瞬間最高斜度80‰、登坂時間1時間以内」ならいけそうな気がしますが、平均斜度40‰ x 平均時速10km x 1時間走行だと400mしか登れないんですよね。これでは天下の嶮は越えられない。。。
■ルート
自転車で走行できるルートは、①国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルート、この派生で②宮ノ下から仙石原経由で湖尻に向かうルート、および③畑宿経由の旧道ルート。
小涌園から姥子を経由し湖尻に向かうルートは、大涌谷への交差点(933m)をピークに標高差200m超の山越えになりますので、ここでは対象外とします。
余談ですが、Google Mapsで自転車ルート検索すると、浅間山へ通じるハイキングコース「湯坂路(鎌倉古道)」を提案してきます。多分最短距離と思いますが、自転車では無理でしょう。
①国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルート
箱根湯本駅(96m)から宮ノ下〜芦ノ湯を経由し、国道1号線最高地点(874m)まで、標高差約790m÷走行距離13.3km=平均斜度59.4‰です。
②宮の下交差点から国道138号線経由で仙石原、湖尻に抜けるルート
箱根湯本駅から宮の下交差点まではルート①と同じです。
距離は伸びますが、ほぼ早川沿いのルートなので峠を越えることはなく、ダラダラと登っていきます。このルートのピークは、すすき草原から湖尻に抜けるポイント(標高788m)で、傾斜が始まるすすき草原からの標高差は44m、登坂距離0.8km、平均斜度55‰なのでなんとかなりそうす。
③畑宿経由の旧道ルート
三枚橋(84m)から畑宿を経由しお玉ヶ池(761m)まで、標高差約677m÷走行距離10.0km=平均斜度67.7‰です。最高地点は全ルートの中で一番低いですが、登坂距離が短い分斜度がきつい。
3)考察
①国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルート
旧道ルートより、平均斜度は緩いですが、標高差も110m程度多く、距離も3.3km以上長い。
道の広さ的にはこちらのルートの方が走りやすく、人車共に自走不可能なトラブルに見舞われても、箱根登山鉄道とほぼ並行するため、なんとか下山できる可能性が高いです。
②宮の下交差点から国道138号線経由で仙石原、湖尻に抜けるルート
川沿いで一番傾斜が少ないのは間違いなさそうですが;
- 距離はかなり長くなる
- 国道138号線区間は公共交通機関がない(?)ので、トラブルがあるとちょっと大変そう
③畑宿経由の旧道ルート
さすが昔の旅人が使った箱根路にほぼ並行する旧道、1)の国道1号線ルートと比較し、ピークの標高は110m程度低く、距離も3.3km以上少ない最短登坂ルートのようですが、平均斜度67.7‰が命に関わる可能性が。。。
それに道が狭いのと、自走不可能なトラブルに見舞われた場合の下山方法がないというリスクがあります。バイク時代は大好きな常用ルートだったのですが、あの七曲を自転車で登っていく様子をイメージできません。
4)ルート決定
トラブル発生時を想定し、自転車をどこかに係留し電車やバスで帰って来られる「①国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルート」またはその派生ルートで「②宮の下交差点から国道138号線経由で仙石原、湖尻に抜けるルート」を候補とします。
■自転車の性能確認
1)バッテリー
購入当時からするとバッテーの劣化もありますが、フル充電&アシスト強で50km程度走行可能と表示されます。但しこれは平坦ルートでの走行可能予想距離と思われますので、実際の登坂時を確認する必要があります。
1)の国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルートの場合、箱根駅伝でご存知の通り、国道1号線の最高点から芦ノ湖までの下りは、高低差約144km÷走行距離2.8km=平均斜度51.4‰の斜度なので、帰りはここを登り切るだけのバッテリーを残す必要があります。
- フル充電&アシスト強で何km登れるか?
- 1)のルートの場合、国道1号線の最高点で何%バッテリーが残っていたら、その先芦ノ湖まで降りて行っていいか?
2)ブレーキ
バッテリー切れで途中で引き返すのはいいとして、下り坂でブレーキが耐えられるのか?エンジンブレーキ(=電動自転車だと回生ブレーキ)はないので、下りは13km以上ハンドブレーキをかけ続けになります。
制動力を確実に維持するため;
- 途中で休憩を挟みながらゆっくり降りてくる
これが一番の安全策でしょう。 - ブレーキパッドを強化する
リアはすぐにタイヤロックするので、ブレーキシューを強化してもあまり意味はないと思われる。ダウンヒル競技用のディスクパッドに交換し、フロントディスクブレーキの耐久性向上を図る。 - ブレーキのベンチレーションを追加する
- 箱根登山鉄道の緊急ブレーキと同じように、靴の裏にカーボンパッドを貼り、路面との摩擦で制動
絶対バランスを崩して転倒しそう。 - エアブレーキまたはドラッグシュートを併用する
ランナーのトレーニング用品として、人用ドラッグシュートがあるが、自転車でこれをつけて走っている人は見たことがない。木やガードレールに絡んだら大惨事で、世の中の笑いもの間違いなし。
■人間の性能確認
人間はポンコツです。まあ、途中でダメならそこで下り坂を引き返して来ればいいので、動けなくなる前に諦めればいいでしょう。別に途中で諦めたって、誰にも迷惑かかりませんし。。。
念のため、新型コロナ対策で購入した酸素缶とスポーツドリンク持参で行くようにしましょう。
酸欠の恐れがあるのでマスクはしたくないですが、下界はまだ紅葉見物の観光客も多そうです。
それと帰りの下りルートの重力落下走行を考えると、シャツの着替えとか防寒対策をしていかないと、上りルートでかいた汗で濡れた服のままだと風邪ひいてしまいそう。
■高度順応
超一流の登山家や冒険家の方だって、エベレストに挑戦する場合、いくつかベースキャンプを中継し、順に高度を上げて高度順応します。
Kanatecの場合も、自転車の性能以上に人間の体力に問題があるため、様子を見ながら少しずつ高度を上げていきたいと思います。
前述の通り人の初期性能は「平均斜度40‰、瞬間最高斜度80‰、登坂時間1時間以内」なので、絶対に1回の挑戦で最高点まで届きませんので。
1)国道1号線の宮ノ下〜芦ノ湯ルート
チェックポイント | 箱根湯本からの高度差 | 箱根湯本からの走行距離 | 区間平均斜度 |
---|---|---|---|
箱根湯本 | 0 m (海抜94m) | 0 km | — |
出山鉄橋 | 88 m (海抜182m) | 1.9 km | 46 ‰ |
大平台ヘアピンカーブ | 235 m (海抜329m) | 4.1 km | 67 ‰ |
宮の下交差点 | 331 m (海抜425m) | 6.3 km | 43 ‰ |
小涌園踏切 | 429 m (海抜523m) | 7.6 km | 75 ‰ |
ユネッサン | 534 m (海抜616m) | 8.8 km | 88 ‰ |
(元)恵明学園 | 595 m (海抜677m) | 10.0 km | 51 ‰ |
芦ノ湯 | 765 m (海抜847m) | 12.8 km | 61 ‰ |
国道1号線最高地点 | 790 m (海抜872m) | 13.3 km | 50 ‰ |
(ルート全体) | 59 ‰ |
これまでの体験で、宮の下交差点から小涌園踏切に向かう蛇骨川沿いの登りが一番きついと思ってましたが、踏切からユネッサンまでの方がきついようです。箱根駅伝5区ランナー、恐るべし!
まずは宮の下交差点(6.3km、53‰、途中何度か小休止を挟み1時間程度)を目標に、高度順応&データ取得を開始したいと思います。
2)宮の下交差点から国道138号線経由で仙石原、湖尻に抜けるルート
チェックポイント | 箱根湯本からの高度差 | 箱根湯本からの走行距離 | 区間平均斜度 |
---|---|---|---|
箱根湯本 | 0 m (海抜94m) | 0 km | — |
出山鉄橋 | 88 m (海抜182m) | 1.9 km | 46 ‰ |
大平台ヘアピンカーブ | 235 m (海抜329m) | 4.1 km | 67 ‰ |
宮の下交差点 | 331 m (海抜425m) | 6.3 km | 43 ‰ |
ホームセンターヤマダ | 386 m (海抜480m) | 8.5 km | 25 ‰ |
ガラスの森 | 561 m (海抜655m) | 11.8 km | 53 ‰ |
温泉荘バス停(最高地点) | 690 m (海抜784m) | 15.5 km | 35 ‰ |
湖尻海賊船乗り場 | 632 m (海抜726m) | 18.4 km | -20 ‰ |
(ルート全体) | 45 ‰ |
宮の下まで到達した時点の人車の状況次第ですが、こちらのルートの方が可能性が高そうな気がしてきました。
■2021.12.05(日) 練習その1(出山鉄橋まで)
日曜日の昼過ぎ、想定通り上りの車は減って、下り方向の車が増えてきてます。お天気は、時折晴れ間が見える曇り、結構寒いです。普段は呼吸困難の原因のマスクですが、今日は防寒装備になってます。
箱根湯本駅前のお土産街は人が多かったので、息を潜めて速やかに通過、旭橋から山登りモード(※1)に切り替えます。
※1:アシストモードを強、ヘルメットと自転車のリアライトを点滅モード(できれば、ヘルメットに黄色の回転灯をつけたい)
函嶺洞門は完全に封鎖されてます。歩行者くらい通してくれてもよさそうなのですが、何か安全上の支障がある?数年前まで普通に車が通ってたので、問題なさそうな気がしますけど。せっかくの重要文化財&土木遺産がもったいない。
(今見ると、結構道幅が狭い。よくここでバスがすれ違えたと思います。)
千歳橋を渡ると、最初の難所「塔ノ沢温泉街」に入ります。別に斜度がきつい難所ではなく、道が狭く路側帯がないので、劇遅Kanatec号はとても邪魔ですよね。はい、ちゃんと自覚し、可能な限り端っこをフラつかないよう注意して走ります。(道の端っこにはいろんなゴミがたくさんあるので、パンクが怖い)
最初の難所「塔ノ沢温泉街」を通過し、山岳ルートに入りました。
ここまではKanatecも電動自転車も快調でなのですが、頑張っても時速15km程度しか出ないため、時折バスが後ろでつかえてしまいます。乗用車は十分追い抜き可能なのですが、バスの車幅になるとカーブが続くため自転車を安全に追い抜くのが大変そうです。
本日は特に反対車線の下りが渋滞しており、バスがセンターラインを超えて自転車を追い抜けない状況です。お仕事で走っているバスの邪魔をするわけにはいきませんので、出山鉄橋の吊り橋で登坂中止しました。
まだ人間には十分余力はありますので、これは本日の収穫です
帰りは渋滞している車の横をすり抜け降りてきましたが、やはりバスの横はすり抜けるスペースがないです。渋滞で止まっているバスを自転車がすり抜けできないということは、走っている自転車をバスも簡単に追い越せないってことですよね。
なかなか先に進めないので、下山途中にあったもう一つ吊橋で紅葉見物してきました。箱根湯本あたりはもう少し紅葉が楽しめそうです。
■バッテリーマネジメントデータ
チェックポイント | 標高(※1) | 標高差 | 湯元からの走行距離 | バッテリー残量(※2) |
箱根湯本三枚橋 | 88m | — | — | 52km |
出山鉄橋 | 184m | 96m | 1.9 km | 45km |
大平台ヘアピン | ||||
宮の下交差点 |
出山鉄橋の先、箱根登山鉄道でさえ三度のスイッチバックが必要な程斜度がキツくなるので、バッテリーがどこまで持つか?
宮ノ下あたりが限界のような気がしてきました。
■つづく
車の多い土日の挑戦は、バスの運転手さんにご迷惑を掛けるので、平日休みに再挑戦したいと思います。
結果は随時追記していきます。